チャーリーは以前買った富野氏の本に、サインをしてもらえることになり、いかめしく奥ゆかしく感謝して極太の金色のペンでサインをしてもらっていた。このことは彼にとってなによりのご褒美になるだろう。 そんな息子に富野氏は"So you like Gundam?"と英語で聞いてきた。 「はい」と息子。 彼にとってみればこれだけでも十分満足なことであったが、富野氏はまるで5年生の先生のように彼に畳み掛けてきた。チャーリーが正確にはガンダムの何が好きなのかを。 6人の大人の視線が彼の上に注がれた。 「話しの流れが好きです・・・なんて複雑なんだろうって」と好きな点をあげた後で彼は口ごもった。富野氏は彼を勇気付けるようにうなづいた。3台のテープレコーダーが回り始めた。 「それからキャラクターも一筋縄ではいかないなって・・・」そこまで言ってから息子は助けを求めて私の方を向いた。
それが良いことか悪いことなのか私にはわからなかったが、質問する機会を逸してしまった。 「それは富野氏に論理的な問題をもたらしました。100mのロボットは非常に重いのです」 "Too heavy"と富野氏が英語で付け加えた。 「もし普通のアスファルトの上をそんなロボットが立って歩いたら大問題です。それにまた別の問題もありました。おもちゃメーカーは物語の舞台を地上にするように求めましたが、富野氏は宇宙にしたかった」 "In the universe"と富野氏が強調した。 「しかしおもちゃメーカーも頑固でした。」ポールがすぐに通訳する。「彼らはロボットの巨大さを表現するために、地上を舞台とすることを求めているのでした。そこで富野氏は妥協し、山や川など地上に似せた風景を持つスペースコロニーを作り出したのです。しかしそれでもおもちゃメーカーにとっては十分でなく、最終的にはガンダムを地上へ下ろすことを強いられました。もちろん富野氏は抵抗しました。富野氏の考えではモビルスーツというものは地上では正常に運用することはおろか、移動することすら不可能だからです。」