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富野「まずお伺いしますがアニメってなんですか?」細田「アニメとは?えっと・・・色とりどりの絵の具が散りばめられた素敵なガラス細工」樋口「ボストンから帰られたばかりだそうですが」細田「飛行機の中が乾燥していて風邪を引いてしまたったので、今日は皆さんにお土産としてうつして帰りたいと思います」富野「若者2人に任せると進まないから・・・「時をかける少女」大変に好評でした。この半年で貰った賞の数はいくつですか?」細田「非常に幸運な作品で・・・」富野「受賞歴については帰ってネットで引いてください。日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞されましたが、本当に日本アカデミー賞を主催しているやつらは何を考えているんだと思う。あの賞が設立された当初、まんが映画は映画ではないと一切外された。だから細田氏のような人が受賞してとてもうれしく思っているのでありがとうございます。宮崎監督の後を受けてくださる人が出てきてありがとうございます」
樋口「企画はどこから?」細田「角川からだと思われるかもしれないが、マッドハウスの丸山氏と自分の2人で企画した」樋口「題材としてこの作品を選んだのは?」細田「当初はアイデアがいろいろあったが、この作品になった。企画の当初も話をしないまま進められて滑り出しがよかった。なんとなくいけた」富野「この作品の成功要因は脚本の奥寺佐渡子さんでないかと思っているのですが、いつごろから参加されたんですか?」細田「脚本だけでなくいろいろな人たちの努力や才能が要因だと思う。奥寺さんは、3年前の2月に企画がスタートして2〜3ヵ月後にはオファーしていた。たまたま東映動画で準備稿を目にしてコレだと思った。他の人は検討しなかった。それは他のスタッフにも言える。そこから先が長く、プロットから決定稿まで9ヶ月近くかかった」富野「長くも短くもない当たり前の真っ当な長さです。さっき話に出たがなんとなくいけるという作品はいける。無理をするとこける。それがスタジオワークのおもしろいところ。」
富野「そろそろ問題点に行っていい?細田監督が傷つくんだけど。どうして原作があり何度も映像化された作品を選んだの?僕は大林作品は好きじゃないんだけど」細田「最初はリメイク的なムードで『いまさら』とか『何でアニメで』といわれた。でも新しく発表すると初めて見た人が多いのではないか。この作品は10代に見てもらいたい。なら前作を見ている人はいないだろう。」樋口「意識して変えていこうと?」富野「何をどう変えたの?変えたというのなら『時かけ』のほうが『日本沈没』よりも変え方がうまいよ。アレンジが新作になっていて見やすい。あ。今日は『日本沈没』の話は一切なし」細田「作りはじめに意識したことは2つ。筒井康隆氏の原作を尊重すること。それはつまり、1983年の大林作品を意識しないこと。大林以降『時かけ』は筒井色ではなく大林色になってしまった。それをリメイクしても何の意味もない。原典に立ち返り、原作が書かれた40年前と今とどこが食い違うのか、どこが今でも有効なのか考えた。何もかも40年前とは変わっているように見えるが、あの作品が存在する必要があった時代と今と。そこで2つの作り方があった。原作そのまま65年を舞台として作り、今とどう違うのかお客さんが相対的に見る。もう一つは作り手が相対的に今の作り手として作る。今のフィルターで作り手がみるとどう変わったか。結果として後者を選んだ。」富野「あの作品に現れている言葉は今の子達のセリフ?ああいう言葉遣いを今のティーンエイジャーがするのか?言葉の劇としての現れかたが今のティーンエイジャーをとても気楽にとらえている。つきあいたいと言う言葉がセックスをしたいとしか聞こえない。結局はオ○ンコやりたいってことでしょ。そのやり方をアニメでやっていいのか?ラストシーンのあとあの2人は影でオマ○コやるんだよねというのが想像できる。風俗映画にしかなっていない。本来アニメは実写以上に記号的なものを使っている構造。風俗映画にするのはもったいない。今の子達はアレを良しとしてしまう。それを癒しと勘違いしてしまう。大人の目線がない。高校生にすりよっている。だから最初に『アニメとは何ですか』と聞いた」樋口「むしろぼくはあれは幻想を排除していて、他の学園ものよりもはるかに健康的だと感じた」富野「そういう反論も想定していました。だからどういう話し方をするか3ヶ月苦労した。この話をするために読んだ小説があります。それはウラジミール・ナヴァコフの『ロリータ』。これは2種類の訳が出ていて一つは読み終わり、もう一つは半分くらいで投げ出しちゃったんだけど、とんでもなくすごい作品です。『ロリコン』の語源だから濡れ場が多いと思ったら大間違い。セクシャリティを表現する上でナヴァコフの『ロリータ』程度のことは知っておけ。それから『小さな中国のお針子』という映画があります。この原作は『バルザックと小さな中国のお針子』というのですが、セクシャリティを表現するには最低このレベルが必要。高校生の視点だけでは(不明)。アニメが好きな男のスタッフは、高校生の漫画だけでアニメを作ってきがすんでいる。女性の書いたシナリオは『セックスしたい』を織り込んで『つきあいたい』としているのではないか」樋口「そうはいっても木陰で告っている2人にムズムズするでしょ?それはすでにはめられているのでは?」富野「だからって全肯定したらみんなでバカになる。アニメ好きの、コミック好きの、もっと広くいうと普通の男は女性の持っている目線を見抜いていない。女はどれくらいタフか、どれくらいタフでないか、を知らしめる本を最近読みました。『オリガ・モリソヴナの反語法』という本です。セックスは個人だけの問題ではない。我々オタクがセックスを楽しんでいるかと言うとそうではない。結局今の子達の肯定論しかない。高校生に擦り寄っているだけの姿勢は許しがたい。シナリオはそういう男たちを見透かして書いているのではないか。もうちょっとだけ社会性があってもいいのではないか。演出技術が優れているだけに流れてしまうのは残念」
富野「簡単にほめる事はしてはいけない。世代の違いが持つ見解の違いは意思表示しておきたい。所用があるので途中退席するが、どうせいなくなってせいせいしたと言われるなら、ボンヤリしたままでなく輪郭をはっきりさせておきたい」
細田「アニメという表現を見てもらうには壁があると言う問題意識を持っている。『アニメだから見るのをやめる』『アニメだから見づらい』というのは壁であり見てもらえない。壁は無視できない。壁を意識して作っているが、まだ試行錯誤の過程。題材選びから、アニメに寛容な人とそうでない人のことを考えている。」富野「僕は逆に、この作品は実写が持っている壁をアニメで外している。実写以上だと思う。それはアニメの技法ではなく、映画の演出論であるし、物語の構造論。しょーもない実写の「時かけ」よりはるかにいい。アニメの壁を外している。それは持ち続けていくべき」
細田「女の子を描くのは慎重になっていた。でも、脚本の奥寺さんが『男も女もたいして変わんない』と言ってくれたので、その価値観に乗っかって作った。あそこで『やっぱり違うのよね』といわれていたらこの作品は完成しなかった」富野「それは作家の日常感覚の問題。この時代にどういう劇映画を作っていくか。現象だけでなく社会性も取り込んでいる作家のつくりを見せて欲しい。社会性とは現代性というよりも、世の中との係わり合い。何を求めているのかと言うこと。つきあいたいの次が見えてこない。人物配置はあれでいいと思うが、現在の言葉遣いしか見えてこない。セックスにしかいってない。もっと先の社会に出てどうするのかが見えない。それはかなり御目出度いことよ」樋口「でも俺らが高校生のガキの頃なんてあんなもんじゃないですか?」富野「リアルと劇は違うの。リアルのままだとふしだら。これではオスカーをとりにはいけない」細田「いや、狙ってないから・・・」富野「志は高くもって頂きたい」
樋口「坂道のシーンなど、全体を通して死の匂いがする。ピークが死。隙間の闇のようなもの。」
樋口「つきあいたいだけじゃねえよ!」細田「実は昨日までMITの日本語研究者が主催したイベントに参加して、英語字幕版の『時かけ』を公開した。そこで『セックスの匂いがしない』『これで本当に10代を描いているのか』と聞かれたので、正反対の富野監督の意見が興味深かった。アメリカにはいわゆる青春映画がなく、スクールムービーはセックスが中心になっている。これは文化の違い。アメリカ人は思春期に何かを学び、その体験に大人になってからも引きづられると言うことがないのではないか」
細田「富野監督と仲がいいですよね」樋口「だっていろいろ出てるしさ・・・」
「この作品は多くの男性諸氏にとって思い当たる節だらけでしょうが、思春期の少年心理の何たるかを見事に描き出している点で、現代女性にとってはもちろん、大人になっても思春期から抜け出そうとしない諸君、「当たって砕け」たことのない諸君、平面キャラに「萌え」を感じている諸君にも面白く有益なのではないでしょうか。」
樋口「『時かけ』は上映当初は館数も少ないし、非常に過酷な状況下で作られた作品。あの作品(Gですか?Bですか?)の予算を少しでも分けてもらいたかったよね。あ、あれは受賞してないんだ。」
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